小6の秋以降は、今までとは大きく違う点があります。それは、「受験生本人が、やるべきことを分かっている」という点です。小5までは、とびぬけて早熟でなければ、目の前の宿題とテストに追われているだけで、入試までに何をしなければならないかは分かっていません。そのため、塾選びは非常に大切ですし、「中学受験は親の受験」と言われるように、お家の方のサポートが必要です。しかし、夏期講習で総復習をして、過去問演習を始めている今は違います。受験生本人が、試験範囲の全体を把握し、試験日までに何ができるようにならなければいけないか分かっています。
兼学塾では、中学受験生に対しては「進学塾のテキストや、小学校の勉強をしっかりやる」ということを第一にしています。ただ、小6の秋以降は、自立心がある生徒さんには「自分で考えて取捨選択してね」「勉強が忙しすぎて、自分がやるべきことをできないのは、本末転倒だよ」という話もしています。家庭学習でも、「第一志望の過去問を難しく感じる」「理科の人体がおぼえられない」など、自分なりに体験から考えて言っていることには、今まで以上に耳を傾け、ご本人の意向を志望校選びや学習法に反映させていくほうがいいと思います。
もちろん、この時期でも当事者意識がなく、何をすればいいのか、という問いすら思いつかないタイプのお子さんもいます。1月入試の結果がでてから、「自分は受験生なんだ~」とビックリしている男子も珍しくありません。のんき者の受験生は、中2くらいまで場当たり的な行動をくりかえし、お家の方に大変な心労と経済的負担がかかりがちですが、ゆっくり進むメリットもあります。失敗を重ねて、何人もの大人に見守られながら幼児的万能感を脱却する経験は、学生のうちだけしか獲得できないものです。
中学受験は、幼児に近い子供から、大人に近い子供まで、精神的な成長をする時期に重なっています。そのため、周囲の大人と齟齬が生まれたり、ゆっくりタイプの受験生が必要以上に怒られたりしやすく、ここは高校受験や大学受験にはないリスクだと思います。講師としても、「先月までとは、また違っているところもある」と念頭において受験生と接したいです。